谷口幸三郎 えをかくせいかつ
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美の天使を追いかけて

「子どものころには美の天使は、あまねく誰の肩の上にも腰掛けていたようだ。しかし、その天使は大人になるにつれて離れてしまう。 画家の仕事とは中空に離れていった美の天使を懸命に追いかけることではないか。」とは大学生時代の恩師、野見山暁治先生のことばである(と記憶している)。

「もはや大人になってしまった私が何かの拍子に思うのは自分の鈍くなってしまった感性と固くなってしまった思考だ。

「井の頭線を通勤に使っているが、つい最近まで車両にレインボーカラーラッピングの車両があることに気が付かなかった。 園庭で遊ぶ子ども達が「レインボーだレインボーだ」と騒ぐので何のことかと尋ねて教えてもらったのである。聞けばレインボー以外にスカイブルー、オレンジベージュ、ライトグリーンなど7パターンの色の車両が走っているらしいのだ。 駆け込み乗車で「間に合ってよかった」とか、遅れている電車にいらいらしたりとか、乗車すればすぐスマホをいじったり、美の天使が共にいれば見えたであろうものが見えないし、また見ようともしない。 私の肩には子どものころいたはずの美の天使がいない。

「えをかくせいかつ」とは、子どもの目で見ることである。レインボーの車両に出会えたときはその日一日いいことがありそうなきがする。

「芸術にもっとも大切なことがあるとするならば、それはこどもにもできることなのです。いや、むしろ子どもにもできるというところに芸術の叡智が潜んでいるのです。」
パウル・クレー
 
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