ひと雨ごとに空気は透明になり、木々は寡黙になりました。
先日の窯出しでうまれたばかりの人形が、語りかけます。
今夏はあまり元気のなかったにちにち草が9月の陽光を浴びて強く赤く咲きました。
夏の暑さから解放されてほっと一息ついている人形の「ふーっ」という声届きましたか?
夏にはひたすら茎ばかりが伸びていた西洋朝顔が、秋の風に吹かれて見事な花を次々と咲かせています。
しかもあの鰯雲を浮かべるはなだ色の空を花ににじませて。
まる、さんかく、しかくの顔と胴を持つ朗らかな人形花瓶に挿してみました。
秋の空気のように透明なガラスの上の小動物は静かに光の草を食んでいます。
背中に二つの小さな穴に花を生けてみました。
作品の切れっぱしだった土くれが形をもって主張してきました。
「私のこの広い両腕であなたを抱きしめてあげよう。
決して役に立たないものはないんだよ
現にこの私は土に戻る前に
一つの命と生きる意味を与えられたのだから」と
アトリエを訪れて下さるお客様はたくさんの陶作品とと対面して
「これは何ですか?」
「おもしろい!」
「かわいい」
「何に使うんですか?」
といろいろ訊かれます。
食器、花器、土鍋、文具など生活の中で役割を持つ何かとして位置づけられ、用途がはっきりしていると、なるほどと納得されます。
皿やカップや花器の形をしたものもたくさんありますし、これからも作っていくことになるのでしょうが・・・
最近作品を作る過程で生じた土くれの形に魅せられて、焼いて留めておきたいと思うものがどんどん増えてきているのです。
作家の意図から、するりと抜け出した土の塊が自ら作家に語りかけてくる、しかも土くれの主張は作家本人の作りたいもの以上に強い何かを訴えてくるのです。
土くれの形と二人きりで対面(?)したとき聞こえてくる声にあなたも一度、耳を傾けてみませんか?